エヌ氏がひとり

あの日を思い出すためのブログ

『Outer Wilds Echoes of the Eye』クリア後感想

 

※本編・DLC、両エンディングのネタバレを含みます

 

f:id:Anju-0104:20220323232724j:plain

 

本編の興奮冷めやらぬうちにスタートしたDLCも、とうとうクリアしてしまいました。

日誌に日々の感想は綴っていましたが、全体を振り返る機会も欲しかったので改めて記事を作成しました。

なお、新種族の正式名称がわからないためここでは「彼ら」と表記します。

 

『Echoes of the Eye』

そもそもこれを何と訳しましょう。

【Eye】が【眼】なのは良いとして、気になるのは【Echoes】です。

意味は辞書によってまちまちですが、おおむね【こだま】【反響】【残響】と出てきます。前二つはほぼ同じ意味なので、まとめて【反響】で扱うとします。

そうして【反響】と【残響】を比べたとき、よりふさわしい訳語はどちらなのでしょうか。

なんでも両者は異なる現象だそうです。

takahashi-kensetsu.co.jp

  • 反響:音源から直接耳に入る音と、何かにぶつかって反射した音を区別できる。その音が「繰り返されている」と判断できる。
  • 残響:上記を区別できない。音が「繰り返されている」ことも判断できない。

ラストのビジョントーチにおけるワンシーンが「Nomaiの受信した信号は【Echoes】だったこと」を強調するものだとすると、【残響】が良さそうでしょうか。Nomaiは信号が「繰り返されている」ことを判断できない状況でしたから。

もっとも、物理的な意味は考慮しておらず「アンコール」や「エピローグ」といった詩的な意味で【Echoes】を使っているのなら見当違いも甚だしいわけですが…。

 

未知への恐怖と好奇心

プレイ中は、ずっとこれらのせめぎ合いでした。

本編は、博物館に翻訳機、リトルスカウトや先輩宇宙飛行士など、「未知」を「既知」に変える術が豊富です。

「わからなくて怖い」ものに出会ったとき、色んな方法で「わかる」ことができます。

「最も惜しまれることのない存在」のアンコウですら、生物自体は私たちの現実世界におり馴染みがありますし、対処法はNomaiの記録で知ることができました。

 

しかしDLCにはそのいずれもない!

手がかりはスライドリールとビジョントーチだけ。言葉は残されいてない(残されているけれど翻訳できない)ため、見えたものから推測や推察をするほかありません。

流れ者ではリトルスカウトやジェットパックが使えるものの、向こうの世界へ行けば体一つになってしまいます。

HearthianもNomaiも知らない場所で、名も知らぬ種族の住処を装備もなしに探索。

こんなに怖いことがありますか!おまけに見つかれば追跡されます。

でも、だからといって歩みを止めるわけにはいきません。

彼らが何者で、何のためにここにいて、何が起きて何を保管庫の中に入れたのか、それらを知るには怖くても進むしか方法がないですもの。

探索を進めるうちに彼らについて少しずつわかってきたころには、好奇心が恐怖を上回るようになりました。暗闇もBGMにも慣れてきて、「早く知りたい!行きたい!」とスタスタ歩けるように。

 

彼らが追跡するのも、考えてみれば当然かもしれません。

そもそも流れ者自体が見つからないようステルスしてて、さらに向こうの世界に行くにもひと手間ふた手間あって厳重です。

そんなところに見たこともない4つ目の種族が現れたら、それこそ彼らにとっては恐怖ですよね。万が一ランタンの火を吹き消されでもしたら、もう一度この世界に帰ってこられるかどうかわかりません。実際帰ってくることはできない。

後半はそんなことを考えて、「驚かせてスミマセン、、」みたいな気持ちで探索していました。

 

ラスト

保管庫を開けてからの展開は本当にもう…。

あの保管庫で彼は、何十年何百年どころではなく、少なくとも28万年以上たった1人で過ごしていたんですよね。

部屋にあるのは望遠鏡、楽器、チェスのようなテーブルゲームにコップと瓶。それからベッドと椅子。

思いのほか置いてあるものは様々で、この保管庫を作った作中人物は彼に慈悲や同情の心があったのではないかと推察します。何も置かないことだってできたはずですから。

4つ目の完全なスライドリールは彼がビジョントーチで見せてくれました。

彼の投獄後に何があったかは主人公がトーチで見せて…このときの音楽が「Echoes of the Eye」。

open.spotify.com

聴くだけで情緒がやられる。0:14の1音ずつ上がっていくところとか、たまらなく好きです。Nomaiの船が眼の信号を受信するシーンの0:35ごろにはエコーがかかっているのとかもう…。

 

彼が深く一礼し、マントをひるがえして行ってしまうときの音楽は「The Sound of Water」。

open.spotify.com

直訳で「水の音」。その「水」が何を指すのかはわかりません。遺されたビジョントーチの先に広がる水、トーチで彼と主人公がイカダを浮かべた水、あるいは彼の眼に流れる涙かもしれません。はあ。切ない。

 

本編エンディングと分岐

と、やはり感傷的になってしまいましたがここで終わりではありません。

このDLCは本編から独立したものではなく、あくまでも本編の中に組み込まれているコンテンツです。

「Outer Wilds」におけるエンディングは、宇宙の眼へ行き死にゆく星と生まれる星とを見届けること。

彼に会った後に行きました。詳細は以下です(ネタバレ回避用に◆を4つ挟みます)。

次の見出しへ飛びたいときはこちら

 

 

変化があるのは楽器を集めるところから。

Riebeckのバンジョーを集めた後、聴こえる音が増えています。

音の出る方へ行くと、そこには大きな樹木と小さなお墓。空には彼らの故郷から見える惑星。ちなみに、この惑星にリトルスカウトを飛ばすと内部を見ることができます。

見慣れたインターフェースをくるくる回して、穴の底へ。ここにも水。そして5枚の写真と3つのロウソク。

写真に写るものとロウソクを吹き消した後の演出は、どう解釈したら良いかまだわかりません。ずっと考え中です。

3つのロウソクを吹き消してドアが開き、その先には鏡とロウソク。このロウソクも吹き消して…。

!!彼!…?右のツノが健在です。しかし確実に彼でしょう。

ゆっくり振り返った先には…楽器。ということはキャンプファイヤーへ行けば…!

 

会えた―!しかも話せます!

彼の話し方、整然さと距離の近さの塩梅が良いですね。素敵です。

ここの選択肢で何を選ぶかによって、その後の展開が分岐します(クリックで詳細表示)。

一緒になろう。何が起きるか見てみよう。
  • 「私は一族の過ちを繰り返したくない。だが、あなたが危険を冒すというなら、私もそうしよう。」
  • 演奏参加
あなたの旅はもう終わりだ。おつかれさま。
  • 「ここでの私の役割はずっと前に終わり、私は自分の努力が無駄ではなかったことを知った。闇の中に隠されていたものに向き合ってくれてありがとう。」
  • 演奏不参加、この会話の後いなくなってしまう
まだ心の準備ができていない。
  • 「あらゆる決断は闇の中で下される。選ぶことによってのみ、私たちはそれが正しかったのかどうか知ることができる。あなたの準備ができるまで待とう。」
  • 会話終了、もう一度話しかけると同じ会話がスタート

初回はもちろん1番目を選択しました。

彼のいた保管庫の中には楽器がありました。とても長い時間を過ごすなか、彼も先輩宇宙飛行士たち同様ひとりで楽器を演奏していたのかと思うと、やはりこのシーンは感涙します。

2番目3番目を選んだ時のセリフも良いですね…。過去の場面における彼の心情を推察することができます。

 

 

Outer Wildsが何度もエンディングを見られる系のゲームで良かったです。

 

彼らの楽器

初めの方からこれが気になって気になって仕方ない!

弦が一本、ネックはフレット付き。オルゴールのようなピンと櫛歯もあります。

音色がわかりやすいのは「Elegy for the Rings」や「Departure」。

open.spotify.com

open.spotify.com

公式Wikiには「テルミンやミュージカルソーのような音を出す」と書かれていますが、テルミンは本作の音楽を担当したAndrew Prahlowさんによって既に否定されていました。

「どうやって作ったかについて、いつか話せるのを楽しみにしている」とも仰っているので、気長に待ってみようと思います。

ミュージカルソーはノコギリのような金属板と弓を使って演奏する楽器で、こちらがその演奏動画です。


www.youtube.com

結構似た音ですね!弓で弾くのも共通しているので、もしかしたら関係があるかもしれません。

あとは「Vocalists」としてスタッフロールにクレジットされていたエルク(アメリカアカシカ)の声を使ったとか、どうでしょう。

www.youtube.com

(動画のエルクはクレジットされていたエルクと無関係です)

「どうやって作ったか」と仰っている以上は、これまでの楽器以上に色々と作業が行われたのだろうと思います。哀愁と温もりを併せ持つあの音色の秘密、知りたいです。

 

おわりに

本編とDLCのプレイに続いて、この感想を書くのも終わると思うと旅の終わりを実感します。

このゲームは本当に学びが多く、冒険やストーリーについて考えているうちに自分の思考が影響を受けつつあるのがよくわかりました。

一番大きかったのは、「好奇心」に対して素直にさせてくれたことです。

知りたいことは知りたい。

Nomaiの哲学には2つの教義がある。探し出し、理解することが我らの生き方。

量子の月で聴けるSolanumのセリフです。これだけ潔くなれたらかっこいいかも。

人間には1回目のループしかありませんからね。

これからも思う存分Outer Wildsを理解していきたいです!

 

▼まずはトロフィーをコンプリートしました

anju-0104.hatenablog.com